会長のご挨拶
私たち「ガイド協会」は、50年以上にわたり、わが国の山岳、登山のプロフェッショナル集団として登山技術の振興に寄与し、登山の安全と発展に貢献してきました。
わが国は国土の3分の2が「山岳・山地」であり、ガイドは、健全な登山者の育成を図ると共に安全対策をはじめ山岳地の自然環境への保全活動、普及などに一定の役割を果たしてきました。
近年における山岳を取り巻く状況は、気候変動の大きな影響を受け、度重なる局所的な豪雨、猛暑、暖冬などこれまでになく変化の幅が大きく、そのスピードも速くなっています。こうした中、山岳遭難事故の発生率も高まり、絶えず登山者は危険に晒されているといえるでしょう。私たち「ガイド協会」は、この現実を踏まえ、より高度な技術を獲得したガイドの育成に努め、山岳遭難事故の減少に向けて活動しています。これは、「山岳安全対策ネットワーク協議会」「日本雪崩捜索救助協議会」を立ち上げ、ガイド協会以外の山岳団体と協働し、減災に向けた行動を行っています。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波は山岳ガイド・登山ガイドの分野にも確実に到来しています。いまやSNSを使った情報交換は当たり前のこととなり、ガイドの営業活動にもSNSが一般化されています。一方で情報過多、大げさに書き込まれた情報を鵜呑みにしての山岳遭難事故の発生など課題も山積しています。
当協会は、山岳分野のプロフェッショナル集団として、これまで国内外のフィールドでさまざまな技術開発、調査・研究などにも携わり、技術を磨き幅広い知見や経験を蓄積してきました。今後とも、こうした蓄積を活かし、新しい技術の現場への普及・啓発・定着を通じて山岳安全対策の取組をはじめとするガイド産業による「成長」の実現を図り、行政、山小屋業界など関連事業者とともに登山道の維持管理、循環型社会の形成、自然環境の保全を通じて国内はもとより国際協力へも貢献してきたいと考えています。
また、これらの実現や持続可能なガイド産業の発展を考えるうえで現場レベルでの実践を図るためには、一定の知識・技術を持った「人(プロガイド)」が不可欠です。当協会は、これまでの資格認定を通じて山岳ガイド・登山ガイドの現場を支える中核的な人材の育成に努めてきましたが、こうした人材の育成にも更に積極的に取り組んで参ります。
引き続き、ご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
2024年4月1日
公益社団法人日本山岳ガイド協会
会 長 谷 垣 禎 一